1. HOME
  2. ニュース
  3. シスターの散歩道
  4. 花子と花男

ニュース

花子と花男

シスター ルース 森

花子と花男
 これは一羽の鶏の名前です。
 何年か前、夏休みも近くなったある日、私たちの修道院に一羽の鶏の雛がやって来ました。小学校の孵卵器で孵って、貰われ残ったのでした。“花子”と名づけられたこの雛は、中庭の片隅に置いた小さな箱から、みるみる行動範囲を広げて、急造のバリケートを超え、
花壇に侵入して、土を掘り返すようになりました。大好きなレタスを見せると、羽を広げて大急ぎで駆けつけます。私たちを仲間と思っているのか、夜、共同室でテレビを見ていると、網戸を駆け上って部屋に入ろうとします。
 夏休みが終わって、花子は小学校のケージへ移って行きました。レタスを持って見に行くと、寝床にしている高い棚から飛び降りてきて、片足を後ろに踏ん張って、同宿の兎を
威嚇しながらレタスを独り占めにします。
 真っ白で大きなこの鶏を見て、子供たちが「この鳥は白鳥ですか。」と、尋ねたという話とともに、たくましい姿のせいか「これは雌鶏でなく、雄鶏だ。」と、言われている話も伝わってきました。「じゃあ、花子ではなく、花男と呼ばなければならないのかしら…」と、
話しているうちに、鶏は山の家で飼われることになりました。
 しばらくたったある日、シスターMが白い小ぶりの卵をもって小学校から帰ってきました。花子が卵を産んだのでした。
 これは私たちの修道院にまつわる伝説的な話です。