死屍を鞭打つ
彼女は4、5歳の頃おばあさんの葬式に参列しました。
まだ、土葬が行われていた頃で、大きく円形に掘った穴の中に、丸い棺桶が静かに下ろされました。
参列した人は少しずつ、棺の上に土を投げ入れる習慣があり彼女にも番が回ってきました。
お棺の中におばあさんが入っていることを知っている彼女は、どうしても、土を投げ入れることが出来ず、いやがりました。
「死屍を鞭打つ」とは、文字通り、墓を暴き、死体に300回も鞭を加えたと言う、中国の史実にもとづいています。
4、5歳の子が死者に向かって、わずかな土を投げ入れるのを躊躇したことを考えると、鞭打った人の憎しみと恨みの程がうかがえます。
と同時に、「この人たちは自分が何をしているのかを知らないのです」と、今 自分を殺している人々のため十字架上で弁明されたキリストの姿の中に、恨みや憎しみを破る力と、新しい世界の広がり、新しい生き方が、示されているのを感じます。
この四旬節が、すべての命を 十字架を通して眺める深みへの旅となりますように。