景徳鎮
本部修道院の食卓でいつも使っている大きくてやや重い感じのする素朴なお皿が私の目に留まりました。
「景徳鎮製」とお皿の裏面中央に窯元が印されています。お皿の表面素地は白でごく単純な模様がほどこされているだけですが色彩は見事な青!この青色に魅了されました。どのような経路を経ていつから私どもの修道院で使用されるようになったかはわかりません。このお皿ははるばる中国・北宋(960-1127)の時代から焼き継がれてきた景徳鎮のお皿なのです。
かつてノートルダム女学院で世界史を担当していたとき、景徳鎮の磁器は歴史的に名を馳せたこの地の陶窯で生産され、今日に至っていると紹介してきました。数年前の同窓会で、素敵な器に盛られた料理を味わいながら、今は主婦歴30年以上の卒業生の一人に「景徳鎮を憶えていますか」と問いかけたとき、彼女は「はい、久しぶりに景徳鎮の名を耳にし、本当に懐かしいです。」と笑顔で話してくれました。食事時は食器にも関心が集まりそれにまつわる話題が飛び交います。
ちなみに世界的に有名な「景徳鎮」の磁器は朝鮮半島を経て、日本へ、そしてヨーロッパやイスラム圏へと広がっていきました。景徳鎮の磁器が発展していった背景には、中国の歴代皇帝や諸侯の手厚い保護があり、芸術性の高い磁器を生産できたからでもありました。この磁器は次第に一般民衆にも親しまれ、今日では私たちの茶の間でも愛用されています。グローバル化の今、諸外国との文化交流や多種多様な物産の往来は私たちの心を豊かにし、相互理解と互いの絆を深めるのに貢献していると肌で感じることができます。
一千年の歴史を誇る景徳鎮の食器が京都のこの修道院で愛用されていることに感動し、景徳鎮の方々へ感謝の思いを伝えたくなりました。