秋によせて ~ 読書の季節 ~
「灯火親しむの候」となり、秋の夜長は読書が最適だと小さいころ、父が私たち家族に話してくれたことを思い出します。
中学生の頃、教会の図書室は私の知識の宝庫のようでした。毎週日曜日、教会から借りてきた本を手あたり次第読んだものでした。読書することが楽しくて夜を徹して読み続けたものです。読書の時間は限られているので、一刻も早く完読したいと思うのですが気だけが焦ります。
10ワットの裸電球の明かりを頼りに、布団に空間を作り、母が寝静まったことを確認し、本と向き合うのです。誰に邪魔されることもなく読書にふけることができました。これは私だけの秘密であり、好奇心を誘う大冒険でした。テレビもなくラジオや蓄音器がぜいたく品だったころ、読書は私の知識を育ててくれる大切な手段!本を通して未知の世界がどんどん広がっていくのを感じました。夜中に起きた母から「早く寝なさい」と云われ、母は電気を消すのです。それでも私は息を凝らして母が寝たことを確認し、また、本と向き合うのでした。途中で起きた母が「早く寝なさい」と再度の忠告、そして電気を消すのです。私は母が寝たことを再確認し、豆電球を頼りに読み続ける毎日でした。読書にまつわる母との格闘が繰り返された秋の夜を、今は懐かしく思い出します。
読書の幅が広がっていきますと、平素何気なく使っている言葉でも、本当の意味が分からずに使っていることの多さに気づかされます。それで、今日は、知っているはずで実は、定かでない内容に迫りました。調べていく内に「灯火親しむの候」の語源は中唐の文豪、韓愈(768-824)が「符読書城南詩」の中で息子の符に、秋の夜は灯火を掲げて読書するのに最適だと言い、学問することの大切さ、しかもそれは読書が一番良いと語っていることを知りました。