お賽銭
お賽銭
ある夕方、私は病院にいくバスに乗っていました。注文しておいた「杖」を受け取りにいくところでした。おりるバス停が近づいてきたころ、ふと、お財布のなかに十分なお金があるかどうか心配になりました。うかつにも確かめるのを忘れて、出てきてしまったのです。頭のなかで、いくら持っているか計算してみました。どうも少し危なそうです。取りに帰るには、かれこれ2時間もかかり、約束の時間に戻ってくることもできません。ともかく、病院までいって、計算してみようと思いました。
バスを降りるとき、ふと、バス停のそばに小さな祠(ほこら)があることをおもいだして、祠のあたりにお金が落ちていて、借りることができたら助かるのだけれどなどと、とりとめのないことを思ったのです。ところが、祠の敷地の隅に100円 硬貨がおちているのが目に入りました。この際100円でも貴重です。急いでお借りしたのです。幸い、財布のなかに、どうにか受け取りに必要なお金があり、帰りに祠の前をとおったときに、感謝しながら、硬貨をお賽銭箱にお返しできたのです。
「念には念を入れる」という言葉もあるのに、私は「念を入れる」ことさえしなかったと反省し、また、必要なときに、いつも助けをただいていることに感謝したのでした。