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ネパールの蝶

シスター ルース 森

ネパールの蝶
 10年も前、ネパールのバンデプールという山の上にあるノートルダムの幼稚園と小学校で3ケ月 教えたことがあります。夜明けとともに起きだした村人の生活の物音を聞きながら、窓の外を眺めると近くの尾根や遠くの峰の先端だけをかすかに見せて、足元から雲海がはるかかなたまで広がっています。娯楽が少ないせいか、嬉々として勉強を楽しんでいるように見える元気な子供たちの声を聞きながら、陽が当たる窓辺に立つと、雲海の晴れた校庭や畑、木々の上の広い空間を蝶が飛んで行きます。種類の違う蝶たちが、まるで用事でもあるかのように、同じ方向に、思いがけない速さで飛んでいくのが印象的でした。
 ダサインというお祭りで学校が休みなので、カトマンズに行き、何日かの黙想をしたとき、一人の男性が自分の収集したたくさんの蝶の標本を見せてくれました。注文を受けて、日本の収集家にも送っているとのことでした。「たくさんの蝶を捕っても、どこかに傷があって、なかなか標本にできるような完璧な蝶はいない」と言った男性の言葉が心に残りました。
 10年ぶりにネフローゼが再発して、静養の日々を送っていて、ふと、ネパールのあの広々とした自然の中を飛んでいた蝶たちを思い出し、何か親しみを感じたのでした。