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どうぞ

シスタージョアンナ徐

 2週間に一度の割合で土曜日の朝、腰の治療のため京都駅付近まで出かけています。

 プラットホームから地上にあがるまでのほんの短い間のことですが、最近体験したことが今も心に残っており心に安らぎを覚えます。

 普段、京都駅に到着しますとエスカレーターにごく近い昇降口から下車することを念頭に松ヶ崎から乗車することにしています。そうしなければ人ごみに揉まれ、なかなかエスカレーターにたどり着けないことを何度も経験しました。アヴァンティ方面まで行くのですが、京都駅は海外からのお客様で賑わい混雑しています。特にエスカレーターに乗る人々と電車を待つ人々が錯綜し大変なのです。

 いつもはそれなりにエスカレーターにたどりつけるのですが、この日は何故か人混みが多くてエスカレーターに乗るのに難儀しました。その時です。心に響く「どうぞ」の一声がエスカレーターの手前で聞こえました。地上に上る間のほんの短い間のことでした。声のした方向に向かって軽く会釈をし、エスカレーターに乗りました。この「どうぞ」の声に深みと温かさを感じ私はとても幸せになりました。エスカレーターに乗っている間じゅうその方のことが気になり、降りてすぐ私は振り向きました。何と海外からの若い青年でした。瞬間的に目と目が合い心に平和が感じられました。ほんの数秒の出来事でしたのに人の心を揺り動かす深みのある笑顔、声としぐさでした。 

 あの「どうぞ」の一言に互いを生かす貴重なコミュニケションが交わされていたのでした。この一言を人は求めているのではと一日中考えました。世を明るく住みやすいものにするのは大層なことの中にあるのではなく、ごく日常的な人の心の優しさと善意の中にあり、それを人々が気づくかどうかにかかっているのではないかと思いました。 互いに生きがいを感じさせてくれるほんの小さな事柄を「今日」、「今」、「ここで」私も実行しようと自分に言い聞かせたものです。私はその方に笑顔で感謝を伝え、目礼しました。彼の京都での旅の安全と快適な旅を祈りました。いつしか腰の痛みも和らいだような心身の軽やかさを感じたのは言うまでもありません。