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「死の準備」

 友人が買い物から戻った時、ご主人が畳の上に仰向けに伸びていらしたそうです。「どうしたの?」と尋ねると「死の準備をしているのだ。この顔でいいか?」とおっしゃったそうです。友人は「いい顔よ。」と言って二人で笑ったそうです。芸術家のご主人は常人の思いつかないような純な心を持っていらっしゃるようです。

 私のいる施設で働く若い女性が言いました。 私は、カトリック高校の卒業生です。その学校で最初に教わったことは死についてばかりでした。若い私達は反発して、結婚とかもっと夢のあることを話してくださいと言いました。すると先生は、あなた達がどのような人生を送るのか未来のことはわかりません。でもはっきりしていることがあります。それは皆さんが必ず死ぬということです。といわれたそうです。

 死は何人もさけることのできないのですから、死に顔はともかくとして死を直視し準備をすることは勇気ある賢明なことと思います。

 友人のご主人は一年ほど前に「人生に悔いはない。ありがとう。」とおっしゃってお亡くなりになりました。

 カトッリク校を卒業した女性は、年老いた人々を明るく親切に世話をしてくれています。年老いて死を目前にしている人々の人生を温かく見守ってくれているようです。その姿の中にかつての先生の教えが生きているように感じています。

                         (シスターパトリシア久野 道子)