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おくりもの

シスター ルース 森

おくりもの
  今年いちばんの寒さのうえに、小雨もふっている今朝の病院の待合室はしずかです。診察の順番をまつ人々は、スマホも携帯も使わないようです。ことばなくお互いをいたわりながら、目を閉じ、また、床を見つめているようです。ときおり、診察の順番を告げる声だけが響きます。私は広い窓から外の景色が見える奥まったところにある長椅子に腰を下ろし、持ってきた本を読みはじめました。今日もきっと長く待つことになるでしょう。
  どのくらい時間がたったでしょうか。読みつかれた目をあげると、窓の外は雨が止んだようです。2階なので人家はみえず、遠く、近くにみえる山々は、緑のあいだに紅葉を残してきれいです。その景色の中央をよこぎって、長い電線がゆったりと弧をえがいています。50メートルもあるでしょうか。と、急に、陽が差して、思いがけなく、その電線がきらきらと輝きだしました。赤、ブルー、オレンジ、黄色….虹の色です。電線にたまる雨の滴でしょう。イルミネーションのように点滅しつづけるのです。
  私は隣に座っている人に、「電線がきれいですよ」と、声をかけずにはいられませんでした。生まれて初めて見るこの美しい真昼のイルミネーションは、降誕祭を迎える私たちへの、神さまからの贈物でした。