1. HOME
  2. ニュース
  3. シスターの散歩道
  4. 小さな冒険

ニュース

小さな冒険

シスターメリー・パトリシア久野

お天気の良いある日、ぶらりと大原のほうに出かけました。

三千院までは何度か来たことがありますがその先は知りませんでしたので、バスの終点まで行ってみることにしました。帰りのバスに乗れば帰ってこられるのですから。
ちょっとした冒険をしてみたかったのです。

三千院から先になると急に道幅が狭くなりバスの中では、「バス停でなくても止まりますので早めにお知らせください」とアナウンスが入りました。
人間のためのバスと言う気がしてとても嬉しくなりました。乗客のほとんどは三千院で下車し中年のご夫婦と私の三人だけになりました。
終点には、にぎわいがあるかと思っていましたが、道のちょっと広いところで止まってそこが終点ということでした。
そこから小浜と書いた矢印がありました。小浜まで続く、俗に「鯖街道」と言われている道だったのです。
お店もありませんし、行きと同じバスが帰りのバスになるとわかりましたので、しばらく景色を見て、運転手さんに帰りの道を歩いていくので途中で拾ってくださいと頼み、
引き返して行きました。
しばらくすると後ろからバスが来て私のところで止まってくれました。
バスと運転手さんと自然が非常に個人的なかかわりを持ったようでとても嬉しくなりました。

自動販売機、録音されたテープから流れる「ありがとうございました」と言う声‥‥対応している人は顔も見ず一言も声も発しないのに‥‥場合によってはレジに「ありがとうございました」と書いた紙が貼ってあるだけに較べたら、何と個々の関わりが深いことかと思いました。
人間同士の関りを久しぶりに取り戻したようで満足して同じバスで三千院まで引き返してきました。

秋の日の小さな冒険でした。