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車椅子

シスターメリー・パトリシア久野

去年の秋のことです。

ある集いで久しぶりに友人に会いました。
その集いの後、天気もいいので、一緒に植物園に行くことにしました。

その友人は一見しただけでは分かりませんが難病を持っていますのでゆっくりと歩きます。広い植物園の中、どこに行こうかしらと思っていましたら、「車椅子を押してくれる?」と言われ、園で車椅子を借りられることを知りました。

重い荷物を持っていましたので自分のものと彼女のものを、ロッカーに入れようとしましたが、「私の膝に乗せればなんでもないから、わざわざロッカーに入れることはない」と言われ、そうかなと思って彼女に持ってもらいました。
彼女は二人分の荷物を膝に乗せて窮屈そうに車椅子に乗りました。

まずは秋の日差しを避けて木陰で買ってきたお弁当を食べ、その後、道のよさそうな所を選んで車椅子を動かしていきました。

随分重いなあと思いながら車椅子を押しているうちに気づきました。
私の荷物は私の手にはありませんが、彼女の膝の上にあるのですから、結局私は、彼女と私の二人分の荷物も運んでいることになると。

何ということかと思いましたが、いまさらロッカーのところに戻るのも億劫で、また、彼女に気を遣わせることにもなると思ってそのまま植物園の中を散策しました。

まだ、紅葉には早いようでしたが、蓮の枯葉が素敵でした。

心地良い疲れを感じながら帰る途中、「互いに重荷を担い合いなさい」(新約聖書 ガラテヤ人への手紙)と言う言葉をふと思いました。

重荷を担い合うとは、人との関わりを部分的なものと限定せず‥‥体だけを車椅子に乗せるのではなく、その人の荷物も一緒に乗せるように‥‥その人の持っているもの全てをそのまま受け取ること事のように思いました。

それにしても膝に乗せたら軽くなる!という秋の日の優しい錯覚でした。

この友人は、この数か月後に亡くなりました。