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ガイド

シスターメリー・パトリシア久野

ブラジルに住んでいる友人が訪ねてきました。
学生時代山岳部に属していた彼は、日本から来る友人と一緒にボリビアの6000メートル級の山に登る予定をしていましたが、友人はいろいろな事情で来られなくなり、結局一人で登山したそうです。

その時の経験を話してくれました。
一人なのでガイドを頼んだところ、450ドルしたそうです。物価の安い国で行程一泊の登山なのにどうしてこんなに高いのかと思ったそうですが、とりあえず払って内容を聞くと、ガイド、ポーター、トラック、その運転手、料理人というたいそうな一行になっていたそうです。つまりこれがセットになっているのです。登山は元々ヨーロッパのお金持ちのレクレーションだったようです。

「でも、ガイドはたいしたものだよ」と言っていました。
美しい景色に「きれいだな」とかいろいろ話しかけても返事がないので、どうしたのかと振り返ると、ガイドはじっと彼の足元を見ていたそうです。つまり、登山者の安全だけに心を配っているわけです。 また、高度が高いところで急に立つと一瞬ふらっとすることがあるそうですが、そういう時もガイドは、ぱっと片手で彼の腕を捕まえ、そのガイドの腕は彼を支えてびくともしないそうです。

彼は病み上りだったため、頂上まで500メートルほどを残して引き返したそうです。
「もう引き返す」といったら、「もうちょっとだから」とか「元気を出して」などとは一切言わず、さっと引き返す行動をしたそうです。

来年もう一度挑戦するそうで、そのガイドにもう頼んできたそうです。
引き返す勇気。このガイドだったらもう一度一緒に登ってみようと思うこと。
そのような信頼関係が一日で培われること。
そこに登山者でなければ味わえない醍醐味があるのでしょう。

修道者として、イエス様へのガイドとして、どのようであるのが望ましいのか、多くの示唆を含んだ話のように感じました。