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お持ちしましょうか

シスタージョアンナ徐

年を重ねるにつれ、遠出する時は、できるだけ荷物をコンパクトにしたいと思うようになってきました。

7月下旬のことです。前日は夜遅くまで、仕事に追われていました。東京行きの準備がまだできていません。翌朝、スーツケースに必要品を詰め込みました。できるだけ「最小限度に」を目標に筆記用具と聖書、衣類そして常備薬を入れ、駅に向かいました。切符を購入し、新幹線に飛びこんだのです。車内で一呼吸し、ようやく我に返った感じでした。「今、私は何をしているのだろう」と自問し、朝食を取り始めました。昨晩のことどもがしきりに思い出されます。車内での約2時間半、年に一度の大切な自己省察と神との出会いを求め、黙想に入る準備に取り掛かりました。気が付いたら東京駅到着のアナウンスが入ってきました。                           

山手線のプラットホームへ向かおうと駅構内で案内掲示を探しました。すぐに見つかりましたが、その瞬間、最小限にまとめたはずのスーツケースが殊のほか重く感じられ、階段を上るのがためらわれました。「どうしょう」と不安に駆られその場に立ちすくみました。後ろから、「お持ちしましょうか。」と青年が駆け寄ってきました。あの時の「お持ちしましょうか。」の一言が私には大きな救いでした。スーツケースを軽やかに運ぶ彼の後を追いました。彼は私を気遣い,歩調を緩めてくれています。「神様、本当にありがとうございます。あなたは私に天使を送ってくださいましたね。」少しばかり涙ぐんでいました。

階段を昇りつめたその時です。優しい笑顔が私の視野に入ってきました。品の良い女性が笑顔で彼を待っていたのです。私は彼に感謝を述べ、彼女にも「お待ちになったでしょう。有難うございました。」と言葉をかけました。最後にあの若いカップルに「お幸せにね」と私の思いを込めてお礼を言い、山手線に乗車しました。

京都に戻った今も、あの若いカップルの温かさが幾度となく思い返されます。彼ら二人が幸せを運んでくれたのです。彼と彼女の心使いを心からうれしく思いました。ごく日常的な事柄の中にたくさんの幸せがあることをあの若いカップルが教えてくれました。

彼らに神の祝福と幸せを!