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ガマの穂

シスター ルース 森

ガマの穂
  そこはかとなく秋の兆しが感じられる今朝、バスで深泥ガ池のそばを通ると、背たかく茂るヨシの間にいくつかのガマの穂も見えかくれしていました。何年も前、ちょうどこの季節に、シスターたちの刷新プログラムに参加するために、カナダのアーンプライヤーに着き、森のはずれの住まいから毎朝、本館でのクラスに通いました。
  生活に慣れてきた頃、オープンハウスがあって、たくさんのお客を迎えることになり、私は自分のシンプルな部屋をガマの穂とさまざまの色の折り紙で折った蝶々でかざりました。ほつれないようにヘヤースプレーをかけておいたガマの穂を、何ヶ月もたって裏庭に捨てたとき、1部が割れて中から綿毛があふれ出たのです。
  今朝見たガマの穂のある風景は私に、古事記に載っている「因幡の素兎(イナバのシロウサギ)」の説話を思い出させました。隠岐の島から本土へ渡ろうとして鮫をだまして体中の毛をむしり取られた上、大国主神の兄弟神たちにだまされて海水を浴びて苦しんでいる兎を、通りかかった大国主神がガマの花粉を撒き散らした上を転がらせてなおしてやったという話です。
  アーンプライヤーの裏庭の土のうえに、1匹の兎の体を暖かくおおって余りあるほどとめどなく溢れ出たガマの綿毛を思い起こしながら、古の人々の生活と豊かな想像力を楽しく味わう機会となりました。