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ケリ

シスター ルース 森

ケリ
 先日、唐崎駅から修道院へと歩いているときに、祇園祭りの鉦の音がかすかに聞こえたように思いました。歩いていくうちに、その金属的な音はますます大きくなっていきます。あたりを見回すと、道端の田んぼの傍の大きな建物の屋根のてっぺんで1羽の鳥が鳴いています。体の大きさや足の長さ、また、羽の色からケリだと分かりました。空にもう一羽、白と黒の鮮やかな羽を広げて飛んでいる仲間がいて、驚くほど大きな声で鳴き交わしているのでした。私は野鳥たちに興味を持っていますが、これほど野鳥の実在感を感じたのは初めてでした。
 思えば日常、身の回りで、たくさんの野鳥たちに出会います。私の修道院の庭では、メジロが小さな巣を作って子育てをしましたし、修道院の傍を流れる泉川の水面をかすめてカワセミが飛んで行きます。近くの疎水の並木の間をイカルやエナガ、シジュウガラが群れ飛び、コゲラが幹を叩いています。外国でも、私の部屋の窓辺に美しいカーディナルが家族を連れて餌を食べに来ました。道べの花の蜜を吸うハミングバード。そして、林の木立ちの間を長い尾羽をなびかせて飛ぶサンコウチョウ……私はふと、この地球こそ楽園、神様が人を住まわせたと聖書に書いてある楽園ではないかと思ったのです。
 この地球を外から眺めることができた宇宙飛行士たちが皆、暗黒の宇宙に青く輝く地球の美しさと、宇宙で唯一、水と空気があり、生命が存在するこの地球へのいとおしさを語ってくれています。豊かな自然があり、愛する人々と多様な生き物が住むこの地球をいつまでも美しく保ちたいと切に願ったのでした。