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名前  その二

シスターメリー・パトリシア久野

仮死状態で生まれた妹がいました。
結局、一呼吸もしないまま、名前も付けられぬまま、小さなお棺に入れて埋められ、小さな自然石が墓標として立てられました。
待ちに待ったきょうだいでしたし、白いふっくらとした頬、ただ眠っているようで今にも目を開けそうなその姿は、そのまま心の中で生き続けました。
仲の良い友達と二人でお墓に行き、花や食べ物を供えてそこで遊んでいました。
あるとき、その妹に名前がないことに気づき、二人の名前から一音ずつ取り、美しい名前をつけました。
名前をつけると妹は急に一人の人間として生きだしたように感じ、二人で妹の将来について色々と話し合い、とうとうその友達の弟と結婚させることにしました。
名前をつけた途端にその妹が生きた存在として力を持ち出したのです。
将来の姿が立ち現れ、結婚まですることになったのです。

名前を付けるのはその人に、力と使命を与えること。
名前を知ることは、その相手と深い関わりを持とうとすること。
名前を教えるのは相手を信じ、自分をゆだねること。
名前を知られることによって 支配されるということにもなる ことなどが 、神話や文学、聖書などからうかがえます。

モーゼが神に名前を尋ねると言われた。「わたしは在るという者」と。
 出エジプト記

すべてのものの存在の根底に神は在るということなのでしょう。
その神は私達と名前を呼び合う関係で関わってくださっているということなのでしょう。

この友達とは幼い日のこの思い出を、笑いのうちに語り合うことがあります。
(友達の弟さん‥‥2歳くらいの時、死者と許婚にされた弟さんは、そのようなことはまったく知らず、素敵な方と結婚なさいました)

名前の持つ不思議な力を体験したできごとでした。