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イスラエル巡礼の旅より     その一

シスターメリー・パトリシア久野

手許に一枚の写真があります。
十数年前、イスラエル巡礼の旅に参加した時のものです。

その時 嘆きの壁のある広場で、待ち合わせをしていました。

階段に腰を下ろして待っている間、ふと、横を見るとヨチヨチ歩きをし始めたような女の子を連れた若いお母さんが同じように腰かけていました。
女の子は顔中を笑顔にしてお母さんに歩み寄っていました。
あまりの愛らしさに、お母さんに断わって、その姿を写真に撮らせてもらいました。腰を下ろしている大人の視線と、その子の顔の高さは同じくらいでしたので、どんな写真が出来上がるか楽しみにしていました。

ところが、出来上がった写真には、眉間に皺を寄せ、口を尖らせ、両手を握り締めて
カメラを睨み付けているあの子が写っていたのです。

お母さんには、溢れるばかりの笑顔を見せていた子ですが、レンズを通して自分を単なる何かの対象として眺められることに、精一杯の抗議をしているようでした。

あのような小さい子でも自分の気持ちや、意志と関りなく扱われることに、不快と怒りとを感じるのだと、思い知らされました。

言葉の無い人、意志表示の難しい人を大切にすることの難しさを感じさせられた大切な写真です。