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木の葉

シスター ルース 森

木の葉
 5月初め、私の住んでいる修道院の生垣のアカメモチがたくさんの鮮やかな葉を落としました。聞けば常緑樹はこのごろ葉を落とすのだとか。
 「降りつづく雨にも負けず散り残る庭の公孫樹はよき風待つか」という短歌は、私の歌友の作で、私が気に入っているものです。この歌を読んでいるうちに、1つのイメージが浮かんで来ました。O・ヘンリーの短編、「最後の一葉」に出てくる1枚の木の葉の姿です。1人の貧しい老画家が命を賭して、病気の少女の窓の外の木に、本物と見まがう1枚の木の葉を描いて、少女の生きる意欲を支える話です。
 この短歌では、何日も「降り続く雨」に大方の「公孫樹」の葉が散ってしまった後に、しっかりと枝に残っている何枚かの葉に、作者は暖かな眼差しを注いでいます。目前の
情景を素直に詠み下していて、さわやかです。雨がやみ、いっそう冷たい風が吹いてくると、残った葉も従容として散っていくことでしょう。「よき風待つか」が、この歌を生かしています。この「よき風待つか」には、何か明るい希望、楽しささえ感じられます。
 ドイツの詩人リルケは「葉が落ちる」で始まる「秋」という詩を、「けれども ただひとり
この落下を/ 限りなくやさしく その両手に支えている者がある」と、結んでいます。
この「落下を 限りなくやさしく その両手に支えている者」に信頼して生きていきたいと思います。