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最善の贈り物

シスター ルース 森

最善の贈り物
 私の机の引き出しに小さな銀色のペンシルがあります。亡くなった父が何十年も前に私に贈ってくれたものです。見ているといろいろなことを思い出します。崖から滑り落ちてくる弟を受け止めようと崖の下に走って行って、両手足を広げて身構えた父の格好がおかしい上に、弟を受け止めたら、腕が折れてしまうよと、父の格好を真似て、大笑いする私たち子供たちに、「子供のためなら、腕の1本2本折れてもかまわないよ。」と、真顔になって言った父、私の食べっぷりがよいと私をよく料理屋へ連れて行ってくれた父、あるクリスマスカードに「幸せであるように」と書いてくれた父。父の慈しみは今も私の心を潤し、力を与えてくれます。
 「人間が人間に贈ることのできる最善の贈り物は何ですか。…それはいい思い出です。どんなものでも、この世のものは結局は滅びていく。壊れていく。よい思い出はその人が意識を持っている限り一生続くものです。語り伝えられれば、その人の死後も続く。お互いに他人にいい思い出を上げられるような人間になりたいですね。」と、フランスの哲学者マルセルが、日本に帰ろうとしている若き哲学者だった自分に語ったと、哲学者の今道友信氏が「出会いの輝き」の中に書いています。
 私たちに贈られている最善の贈り物の中の最善の贈り物は、神様からの贈り物です。弟子たちと最後の晩餐を共にされたイエス様はパンとブドウ酒によって、ご自身の十字架上の死の意義を明かにされ、ご自身を糧としてくださいました。イエス様がこの食事を「記念する」ようにと言われたので、毎日、ミサが2000年間も捧げ続けられています。命を捨てて、限りなく私たちを愛してくださる神様の心を日々の生活の中で体験し、愛と感謝の心で受け止め、伝えたいと思います。