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浚渫(シュンセツ)

シスター ルース 森

浚渫(シュンセツ)

  高野教会での入門講座を終えて、ゆっくりと松ヶ崎通りを修道院へと歩いていました。疏水にかかる泉柳橋までくると、何かあたりに活気があります。見ると狭い疏水のなかで一台の作業車が水底の土を掘りかえしていて、そばにコサギが1羽たっているのです。橋のたもとには工事を知らせる看板が立てられていて、工事の内容が「浚渫」と書かれています。その文字を見て、私はちょっとショックを受けたのです。疏水の中の作業車が今やっている作業が「浚渫」なのだと分かったのですが、市民への知らせなので、一般用語にちがいないのに、私はこの熟語を今はじめて知ったばかりか、どう読むのか、音読さえできないのです。

  看板のそばで、作業車の方をみて、「コサギが1羽、作業車のそばで、土が掘りかえされて出てくる魚を待っているんですよ」と話しかけた中年の女性から、この熟語を「シュンセツ」と読むのだと教えてもらったのです。

  私は手帳にこの文字を書き写しながら、同音に「春雪」ということばがあるのを思いだしました。雪の多かったこの冬も今は3月、「浚渫」のあとに心地よく水の流れる疎水辺に、今年も桜が咲き、流れにキショウブが育ち、蛍が群れとぶでしょう。「浚渫」という言葉に出会って、コロナ禍や戦争などの暗いニュースの中でも、大自然の恵みと人と動植物の営みと関わりの中に、平和への希望を感じたのです。