1. HOME
  2. ニュース
  3. シスターの散歩道
  4. 唯一無二の友

ニュース

唯一無二の友

シスタージョアンナ徐

5月初旬のハプニング!

川端通りの修学院道バス停で下車し、桜並木道を歩きだしました。この通りは春夏秋冬を通じ格好のカメラスポットで、どこに焦点を当てても「さま」になる風景です。

春は朝陽を浴びた桜が次第に淡いピンクカラーへと変化し満開になるのが楽しみ、5月は新緑の桜並木をただ歩くだけ、夏はその木陰に感謝し、秋は錦の衣に着飾った樹々を愛で、冬は墨絵を見ているようで風になびく風情を楽しんできました。見事な枝ぶりにすぐさま、杖を柵にかけたつもりでした。お気に入りの風景をカメラに収めた瞬間、杖が土手に落下してしまったのです。「どうしょう……。」 土手のすぐ下は水際ぎりぎりなのです。私が土手に降りるのは言語道断!

カメラを手に隣で撮影に余念のない一人の女性に走り寄りました。「ちょっと助けていただきたいのですが。私の杖が土手に落ちてしまいました。ほら、あそこに見えるでしょ。」彼女は大変気の毒がっているようでした。親身になって杖を引き上げる工夫を考えてくださいました。「私がとって差し上げたいのですが。この靴では少し難しいです。ごめんなさい。派出所が近くにあります。一度相談されたらいかがですか。」と申し訳なさそうにいいました。私は彼女に「聞いていただいて本当に有難うございます。何とかなると思います。」と感謝を伝え、修道院への帰途につきました。ふと工事現場の前を通り過ぎ、竿か引き上げられそうな何かをお借りしようと思いました。「ちょっとお願いがあります。」と伝え、ことの顛末を簡単に説明しました。

工事現場の若い方が出てきました。杖落下の現場へ彼を案内しました。無造作に土手を降り、彼は杖を私の手に戻してくれたのです。この杖が私の手に戻されたとき、「ありがとう」と言って杖を握りしめました。平素、当たり前のように使っていた杖でしたが、私の手許を離れた瞬間、この杖がどれほど貴重で頼りにしていたかを気づかせてくれた体験でした。「唯一無二の友なる私の杖よ、本当に有難う、戻って来てくれて………」