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嬉々(キキ)

シスター ルース 森

嬉々(キキ)

  私の部屋の棚に、赤ん坊のゴリラのぬいぐるみが座っています。ずっと以前、ある休日に、三条通りの大きなおもちゃ屋さんで偶然見かけて、思わず買ってしまったのです。背丈は20センチ、柔らかな体はふわふわの茶色の毛でおおわれ、目を輝かせて何とも可愛い表情です。フォーレスト・ベィビーという札をつけています。私は彼を「嬉々(キキ)-喜び楽しむさま」と名付けました。彼に目を向けると微笑まずにはいられません。

  修道女の部屋にゴリラのぬいぐるみがあるなど、ふさわしくないという思いもあって、アメリカへ帰る友人のシスターや近所の小さい子供に上げようとしたこともあるのですが、いつも断られてしまって、20年近くも私の部屋の棚にいて、時おり目を向ける私を微笑ませてくれるのです。私を微笑ませるのは、彼が体全体でみせている大胆さからでもあると最近、気づきました。道を歩いていると、時おり、乳母車に乗ってやってくる赤ちゃんに出会うことがありますが、人の助けがなければ生きることさえできない赤ちゃんが、危険も多い世のなかを全く恐れず安心しきって元気に乳母車に乗っている姿に私はいつも驚かされるのです。

教皇フランシスコは、「神はすべてのものを、ご自分のやさしさで包んで下さいます。」と書いています。先が見えない状況のなかにいる私たちと共に歩んでくださる神に信頼して、やさしい心で恐れず生きていきたいと思います。